航空事故は減っている?増えている?統計データから見えてくるもの

アメリカの国家運輸安全委員会の行った調査によると、航空機に乗って死亡事故に遭遇する確率は0.0009%と言われています。

アメリカで自動車に乗って死亡事故に遭遇する確率は0.03%なので、その33分の1以下の確率ということになります。

どれくらいの確率かというと8200年間毎日無作為に選んだ航空機に乗って一度事故に遭うか遭わないかという確率らしいです。これが「航空機は最も安全な交通手段」という説の根拠となっています。しかし航空機の場合事故に遭遇すると一般の事故でも死亡事故に発展する確率は極めて高くなるのも事実です。

そこで運輸安全委員会が公表しているデータから航空機の安全性を考えてみたいと思います。

ライオン・エアの墜落機JT610は登録後2ヶ月の新造機

航空事故の発生件数の推移


これは1974年から2016年10月までの航空事故のデータです。これを見る限り1980年代をピークに徐々に事故の発生件数は減ってきています。

大型機の事故


大型機はエンジンの性能や設計自体の安全性が向上したことで事故件数は減少しています。しかし、最新の機種だから安全というわけではありません。

B787はリチウムイオンバッテリーでのトラブルやタービンブレードのトラブルのように死亡事故までは行かないトラブルが相次ぎました。

大韓航空2708便エンジン火災事故


まだ記憶に新しいのは大韓航空の2708便が羽田空港でエンジンから出火したため滑走路が閉鎖された事故です。

エンジン内のタービンブレードが多数破断し、エンジンカウルも破損して滑走路に破片が散乱しました。詳細な事故調査は現在も行われています。

モデル別の死亡事故率


ここでの死亡事故率は100万フライトあたりの事故率を表しています。

モデル死亡事故率死亡事故件数
コンコルド11.36%1
エアバスA3101.34%9
ボーイング747-100/300/200 / SP1.02%26
エアバスA3000.61%7
ボーイング737-100/2000.61%49
ボーイング7270.5%51
エアバスA300-6000.33%2
ボーイング7670.3%6
エアバスA3300.27%2
ボーイング7770.24%3
ボーイング7570.23%8
ボーイング737-300 / 500/4000.15%18
エアバスA320 / 318/321/3190.11%14
ボーイング737-600/700/900/8000.08%7
ボーイング747-4000.06%2
エアバスA3400%0
エアバスA3800%0
ボーイング7170%0
ボーイング747-80%0
ボーイング7870%0

コンコルドは飛行回数が多くないので1回の事故でも事故率ワースト1位になっています。
また新しいモデルはまだ1回も死亡事故が起きていないものが多いので事故率が0%になっています。B777も少し前まで0%だったので最も安全な飛行機とも言われていました。

ヘリコプターの事故


ヘリコプターの事故は最近は減少傾向なのがわかります。しかしヘリコプター事故の発生原因はダントツで操縦ミスがトップです。

ヘリコプターといえばドクターヘリが有名


ドクターヘリは2001年以来10年間死亡事故ゼロです。

しかし死亡事故はゼロですがドクターヘリの事故も発生しています。最近では2016年8月8日に発生しました。

ドクターヘリが要請を受けて現場に向かいましたが、着陸に失敗し大破。18歳の高校生が搬送される予定でしたが急遽救急車で搬送されることになりました。しかし8日の夜に死亡しました。

病院側は死亡は「事故による影響はなかった」とする調査報告をまとめました。とはいえ遺族の方からすればやりきれない気持ちだと思います。

小型機の事故


数人乗りの小型機などはピーク時よりは減ったものの、一定件数の事故が発生しています。記憶にあたらしいのは東京都の調布に墜落した事故「調布市PA-46墜落事故」でしょう。

調布市PA-46墜落事故

小型飛行機が、平成27年7月26日に、操縦者1名及び同乗者4名が搭乗し、調布飛行場の滑走路を南に向けて11時58分離陸したが、11時00分ごろ調布市富士見町1丁目24付近の住宅地に墜落し、炎上しました。

  • 死傷者:機長、同乗者1名及び住民1名が死亡、同乗者3名が重傷、住民2名が負傷
  • 航空機の損壊:大破

この事故では、重量超過やエンジンの整備不良、操縦ミスなどさまざまな見方から現在も調査が行われています。小型機ではフライトレコーダーなどを搭載していないため事故調査が難しく本当の事故原因がわからないことがあります。

過去の事故原因からの対策や整備不良や操縦ミスからなかなか事故件数の減少につながらないのが今後の課題と言えます。

超軽量動力機の事故


超軽量動力機という名称は日本独自の呼び名ですが一般的にはウルトラライトプレーンやマイクロライトプレーンと呼ぶものです。

1970年代終わり頃から1980年代初頭にかけて手頃な動力飛行を多くの人々が求めた結果、多くの国の航空行政当局によって最小限の法規の適用を受ける軽量で低速飛行の飛行機として定義されました。

そのため、1980年代初頭から多くの事故が発生しているのがわかります。操縦するために操縦士技能証明書(自家用操縦士や事業用操縦士)を取得する必要はないため、航空工学の知識や操縦に関する知識や技能などが極めて乏しいまま操縦した結果、初歩的なミスによる航空事故も多数起こっています。

まとめ

こうしてみると事故率という観点からは明らかに大型機が安全という結果になりました。今後はさらに事故率を低減できる技術が発明されることを期待します。

オスプレイの事故率


ちなみに航空機とヘリコプターの中間のような話題のオスプレイですがこれは実はヘリコプターよりも事故率が低いという調査結果があります。

事故率の定義が飛行回数や飛行時間などバラバラなので一概に比較はできませんが、ヘリコプターよりオスプレイのほうが安全となると「オスプレイの事故率は高くて危険!」と報道しているマスコミが飛ばしている取材ヘリの方が危険という事になりますね。

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