最近話題になってきている羽田空港の新飛行ルートとは、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、国土交通省が国際線増便のために都心上空の飛行ルートのことです。
国土交通省が製作した「羽田空港のこれから – 国土交通省」というページで都心上空を飛行する前提で解説されています。
羽田空港の滑走路
そもそも羽田空港は2009年度まで3本の滑走路で運営されていました。もう1本滑走路を建設して発着回数を増やそうと建設されたのが2010年8月に完成したD滑走路です。
このプロジェクトは耐震性能をはじめ高度な品質要求を満たすだけでなく、100年間の長期耐久性を実現する維持管理に配慮した設計、さらに現空港を稼働させながら41ヵ月の短工期で建設するという難しいものでした。
建設工事の内容はこちらで見ることができます。
鹿島:KAJIMAダイジェスト:特集:羽田Report――D滑走路建設工事
D滑走路の建設費
当時想定事業費 | 約7,000億円 |
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16年度予算決定段階 | 約6,200億円 |
落札額 | 5,985億円 |
最終金額 | 6,730億円※ |
※12%アップのうち11%は資材物資の高騰による物価スライドが適用されたことによる
発着回数の変化
D滑走路建設前 | 年30.3万回 |
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D滑走路建設直後 | 年33.1万回 |
D滑走路建設後(最終) | 年40.7万回+深夜年4万回 |
昼間時間帯の発着回数は最終的に1時間あたり80回。
つまり、6,730億円かけて100年持つD滑走路を建設したことで約14万回発着回数が増えたことになります。
新飛行ルートとは
ところが新飛行ルートでは「このD滑走路を使っても1時間あたり84回しか発着できないので、D滑走路を使わずに今までの3つの滑走路で都心上空を飛行することで1時間あたり90回発着が可能になるからそうします。」と言っている感じです。
そして「これ以外の方法はありません」と断言しているように思えます。
当時も都心上空を飛行ルートにすれば、こんな建設費を投資して発着枠を増やす必要はなかったのです。しかし、都心上空を飛行せずに発着枠を増やすにはどうしたらいいか?を設計者たちが考えに考えた結果D滑走路建設に行き着いたはずです。
ところが「オリンピックがあってもっと発着枠を増やしたいからD滑走路は使わずに都心上空を飛行します」と聞こえます。あまりに何も考えてない感じがしてなりません。
これほど都心上空を飛行する空港は福岡空港くらいです。
福岡空港の歴史
少々脱線しますが福岡空港があの土地になったのには理由があります。
戦前 | 昭和19年に陸軍が席田(むしろだ)飛行場を建設 |
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戦後 | 米軍に接収され板付空港に変更 |
現在 | 昭和47年に米軍から返還されて福岡空港 |
もともと飛行場から始まり米軍の空港になり現在の商業用の空港になったわけです。
福岡空港でも航空事故やハイジャックがありました。
年 | 事件・事故 |
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1959年 | 核爆弾を搭載した状態で火災事故 |
1962年 | 板付基地包囲事件発生 |
1968年 | 九州大学電算センターファントム墜落事故 |
1970年 | よど号ハイジャック事件 |
1989年 | 中国民航機ハイジャック事件 |
1996年 | 福岡空港ガルーダ航空機離陸事故 |
2005年 | 第1エンジンが異常燃焼し火を噴いてタービンブレードの金属片が暴発 |
このように起きてほしくない事件・事故も起きてしまいます。
都心上空を飛行する問題点
福岡空港のように事件・事故も問題ですが重大インシデントにならないような落下物、特に氷などが住宅地に落下する可能性もあります。
この場合着陸後の整備ではわからないため大きな問題になりかねません。
騒音の問題
国土交通省のページでは「騒音の中で暮らしているので騒音はあって当然です」という言い方です。
しかし、実際は旅客機の騒音はレベルが違いすぎます。
騒音の単位はdB(デシベル)で表しますが、一般の人にはまったくピンとこないと思います。
それを狙って「大した騒音はありません。騒音レベルがある一定の区域は防音工事など助成します」となっていますが、おそらくこの助成対象の地域はごく一部になると思われます。
周知不足
新ルート案は、4月に国土交通省が公表しました。6月にはパネルを展示し訪れた人に個別に内容を伝えたが、参加者は計118人でした。豊島区の市民団体「としまの空を考える会」が早急に大規模な説明会を開くよう求める要望書を国土交通省に提出しました。
このように殆どの人は新飛行ルートすら知らない方が大多数です。
いつから新飛行ルートで飛行するか
新飛行ルートの運用開始時期はまだ未定です。
おそらくこのままだと周知されないまま実行されそうです。
徐々にあちこちで反対運動が始まっています。
私個人の意見としては、この飛行ルートは経済性のみ考えただけであまりにリスクが高すぎると思います。