最近は、JALの協力で航空業界の裏側がよくテレビで放送されるようになってきました。先日も鉄腕ダッシュで徹夜ダッシュという内容で羽田空港の特集が行われていました。
そこでみなさん驚いたのはあの大きな飛行機を人が手で洗っていたところではないでしょうか?
おそらく手で洗う作業だけみると「なんであんなに大変そうで効率の悪い作業をやっているの?」と思った方も多いと思います。それはにはきちんと理由があるのです。
目次
飛行機を洗浄する理由
そもそも機体を洗浄する理由はいくつかあります。
安全面
離着陸時衝突した虫やタイヤかすなどが汚れ→サビ→亀裂となると大変です。汚れなのか亀裂なのかわからないと大変です。きれいに清掃されていれば目視でチェックが可能になります。
商用面
みなさんは搭乗する機種や航空会社は選べますが機体は選べません。全く清掃されていない汚い飛行機に乗りたいですか?窓も汚れて景色も見えない機体など乗りたくないですよね?
航空会社は商用面のブランドイメージのためにも洗浄を行います。
ちなみに合衆国大統領専用機や日本の政府専用機などは通常の旅客機とは比べ物にならない頻度で洗浄されています。国のトップ・代表が搭乗する飛行機ですから当然ですね。
ボーイング747専用の自動機体洗浄機
車で言えばガソリンスタンドなどにある自動洗車機、飛行機用の自動機体洗浄機は世界で1台だけありました。しかも日本の成田空港に存在していたのです。存在していたと過去形なのはそう、今はもうありません。
当時、旅客機といえばB747の時代。B747を手洗いする場合、大量の人員と時間が必要でした。そこでB747を世界で最も多く保有していたJALはB747専用の自動機体洗浄機を川崎重工業と共同で開発し1987年に完成しました。その姿は巨大なジャングルジムのようなものです。
開発期間 | 10年 |
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開発費 | 20億円 |
作業員 | 20人→5人 |
作業時間 | 4時間→100分 |
ちなみに2006年6月21日に洗浄延べ5000機を16年目で達成しJALが記念式典を行いました。
残念ながらB747の退役後は不要となった自動機体洗浄機は解体されました。
川崎重工業のHPより
最新鋭の技術を誇る航空業界にあっても、航空機の外面クリーニングは旧態依然として人力(手洗い)に頼っているのが実情です。川崎重工は1987年にJAL(成田空港)に世界初の全自動‐機体洗浄装置を納入し、15年以上に渡り運用され、その高い作業性と安全性を確立してきました。これにより、3K作業の改善と洗浄時間の短縮(機体の稼動率の向上)及び人件費の削減に貢献してきました。
- 特長
合計35個の洗浄ブラシは200台以上の汎用のACモータにより駆動され、ティーチング‐プレーバック方式で運転されています。速度制御、軌跡制御すること無く、航空機の複雑で滑らかな表面形状に沿って均一な洗浄機能を達成するため、揺動アーム機構によるブラシ一定押付け倣い方式を採用しております。これにより、機械設備、制御装置を安価に提供する事が可能となり、予備品の入手、保守・点検が一般の産業機械のレベルで実施されます。
自動機体洗浄機の問題点
機体の洗浄は1~2ヶ月ごとに行われます。
ブラシの位置をNC(数値制御)している問題点
洗浄する際にはブラシが機体にフィットして洗うようになっていますが、機体はアルミ(ジュラルミン系)でできいるので熱の影響で膨張したり収縮したりします。すると予定の位置に機体の表面がないのでブラシは機体に接触せず洗っているふりという現象が発生してしまいます。
20億円もかけたのに清掃をサボられてはかないません。そこでブラシの位置を微調整するのですがこれまた厄介で大変。
新しい機体に対応できない
自動機体洗浄機は専用設計されるため、他の機体や新しい機体に対応できません。ボーイング社に「この自動機体洗浄機を使いたいからそういう設計にしてほしい」と相談したところで「じゃB747を買ってください」と言われるでしょう。人間であれば臨機応変に対応が可能ですがこれほど大きな機会はそうはいきません。これからAIなどの技術が進歩すればもしかすると・・・という感じでしょうか。最初は尾翼などの一部だけなどからはじまる予感がします。
細かいところは洗えない
自動機体洗浄機で大体の洗浄が行えても細かいところまでは洗えません。結局細かいところは人間が洗います。
これらの理由により最終的に、現在は人の手で洗うのが一番効率がいいとされています。しかし非常に大変な作業であることは違いません。
みなさんもきれいな機体や飛行機に乗る際は、手洗いできれいにしてくれている作業員がいることを頭の片隅で思い出してみてください(^^)